図書出版

花乱社

 書評『山口の捕鯨・解体新書:日本人と鯨の二千年』岸本充弘著

2022年「みなと新聞」12.14
2023年「山口新聞」1.5、「中國新聞」1.15、「毎日新聞」下関3.8
2024年「みなと新聞」1.31



「山口新聞」2023年1月5日

 鯨文化 若者も知って 下関市立大の岸本特命教授

 下関市立大経済学部の岸本充弘特命教授の著書「山口の捕鯨・解体新書 日本人と鯨の二千年」が出版された。古式捕鯨から2019年の商業捕鯨再開まで歴史をたどりながら、クジラと地域、食、産業、文化の関わりをひもといている。

 岸本特命教授は元下関市職員で、IWC(国際捕鯨委員会)推進室、下関くじら文化振興室長などを経て昨年春から同大に勤務。共著も含め著書は7冊目で、20年末から執筆に取りかかった。大学ではゼミで指導する学生のクジラや捕鯨に関する知識の乏しさに驚いたといい、「なぜ下関がクジラの街なのか知ってほしい」と若者が手にとりやすいブックレット(小冊子)の形にした。

 古代の遺跡で見つかった鯨肉利用の痕跡に始まり、江戸期に長州藩の有力な財源となった鯨組による組織的な古式捕鯨、明治期の近代式捕鯨への移行、昭和に入り近代捕鯨発祥の地として下関が国内有数のクジラの街として繁栄した様子など、時代を追って社会的背景を解説。3編にわたって紹介した南氷洋捕鯨日誌は11年に下関市内で見つかった貴重な資料で、戦前の南氷洋捕鯨の操業の様子をうかがうことができる。

 商業捕鯨一時停止、調査捕鯨の実施、IWC脱退を経て、31年ぶりに商業捕鯨が再開され、捕鯨船団の母港化を目指す下関の課題も提示。「いま一度クジラで街の元気を取り戻すために何が必要なのか、多くの知恵を集めて前に進めなければならないと思う。特に若い日とたちに、自分だったら何ができるかを考えてほしい」と話す。【久岡照代】

 



「みなと新聞」2024年1月31日

 “長州捕鯨”歴史ひもとく

  山口県では、江戸時代には浦々で組織された鯨組による古式捕鯨(長州捕鯨)が盛んであった。明治時代には、ノルウェーの捕鯨技術を導入した近代捕鯨がこの地で誕生している。

 「山口の捕鯨・解体新書〜日本人と鯨の二千年」(岸本充弘著)には、伝統の鯨食文化と捕鯨産業の足跡をたどるべく、古代から近世、近代、現代までを時系列で掲載している。

 近世編「長州鯨組」の項には、江戸幕府が創立後、外様大名となり財政難に陥った長州藩が力を入れたのが捕鯨だったことを紹介。近代編「若き岡十郎が興した日本遠洋漁業」では、明治政府の国策を後押しに、地元阿武町出身の岡十郎による近代捕鯨会社の設立を記す。現代編「国内有数の“クジラの街”下関の繁栄」においては、昭和30年代に南極海捕鯨で下関が発展した軌跡がみられる。

 その時代に暮らす人々と鯨との関わりについて資料写真も挿入され、読みやすくまとめられている。同書は、中国新聞へ2021年から22年にかけ全25回執筆した連載をまとめたもの。今年3 月には、下関を新たに拠点とする新捕鯨母船「関鯨丸」が完成する。これを機に、同書を手に取り捕鯨の歴史を振り返ってみてはいかがだろう。

 岸本氏は、1965年、下関生まれ。北九州市立大大学院社会システム研究科博士後期課程修了。91年に下関市に入職しIWC推進室、下関くじら文化振興室を経て、2022年から下関市立大経済学部特命教授。山口県の捕鯨産業や鯨文化をテーマにした書籍を複数出版している。